英国の自然を守るナショナルトラスト運動

 コッツウォルズや湖水地方などのカントリーサイドは
英国の人々が老後に是非暮らしたいと憧ている
所なのだそうです。
 その英国のカントリーサイドを訪れた日本人は
風景の美しさに心を奪われ多くがリピーターとなって
再び英国への訪問を夢見るようになる・・・
と言われているそうです。
私も、この旅で、その夢見る一人になったといえます。
そのカントリーサイドには、目障りな看板や電柱などは
ほとんど存在せず見渡すかぎりの緑、なだらかな丘陵地帯や
点在する可愛い家々、そんな忘れられない景観美でいっぱいです。
 この旅で知ったのは、そういった素敵な風景が
ただ初めから存在していたのではなく
「ナショナルトラスト」という環境保護運動で
市民の手によって守られていると言う事です。

野放図な開発や都市化の波、あるいは相続税対策による見切り売りなどから
貴重な自然環境や歴史的建造物などを守るため、国民から広く寄付金を募り
その土地や建造物を買い取ったり、保存契約を結んだり、寄贈を受けたりして
保存、管理、公開して後世に残していこうとする市民運動。
「ナショナル」といっても国家機関ではなく「国民の」という意味合い。
 1895年産業革命による自然環境や歴史的建造物の破壊を防ぐため
弁護士のロバート・ハンター、社会改良運動家のオクタビア・ヒル女史
そして、ハードウィック・ローンズリー牧師の三人によって環境保護団体
「英国ザ・ナショナル・トラスト」は設立されました。
 1999年の時点で「24万8000千ヘクタールの土地」(ちなみに東京都の面積は
21万6800ヘクタールです)さらに「165カ所の歴史的建造物」「19カ所の城」
「909qの美しい海岸線」「183カ所の庭園」を所有しています。会員は270万人
「一人が1万ポンドを寄付するより、1万人の人々からの1ポンドづつの寄付を」
がモットー。ボランティアの登録者は3万7000人以上

・・・・・・・・なのだそうです。

ナショナルトラストマーク.

それでは、ナショナルトラスト運動を簡潔に表した文章を引用してみます。

 もう一冊、2002年に「ピーターラビット紀行」を夫婦で書いた
新井満氏と奥様の紀子さんによると
お二人は、大好きなピーターラビットを描いたポーターさんの
お墓参りをしましょう!と湖水地方でお墓を探されるのですがポーター女史の
お墓はないのです。それはポーター女史は生前から、散骨を希望していたからで
自分の身体も自然還すという意味からなのでは・・・。
そして、この湖水地方のどこか秘密の場所に散骨させたのでしょう・・・。
と、この本に書かれています。この「ピーターラビット紀行」の初版の一年後
2003年11月に新井満氏は「千の風になって」という写真詩集を発表
彼によって紹介されたこの詩は日本中で歌われるあの大ヒット曲となるのです。
 もちろん「千の風になって」はポーター女史と直接の関連は無いのかもしれませんが
私は、ビアトリク・ポータ自身も千の風になって「ピーターラビット」の絵本の中で、
また湖水地方の自然の中で生き続けているのでは・・・・
と思っているのです☆

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ウェッジウッドビジターセンターでジャスパーに出会う

ナショナルトラストとピーターラビット

ナショナルトラストのマーク

いつか、また湖水地方を訪れるなら行ってみたいのが、ニア・ソーリー村のヒルトップ農場です。
なぜなら、ここが「ピーターラビット」の作者「ビアトリクス・ポーター」が長年暮らし
生涯、愛し続けた場所だからです。また、彼女はその景観を後世に残す為に
遺言により、湖水地方の土地4300エーカーと14の農場とコテージを
ナショナルトラストに寄付したのです。
 私は、この旅に出かけるまでは、それほどピーターラビットの絵本ファンでは
なかったのですが、帰国してから「子ども図書館」でたくさんあるシリーズの
絵本を手にしたり、作者の「ビアトリクス・ポーター」の伝記を読んだり
ピーターラビットに関する色々な文献を探す事になったのでした。
 それは、湖水地方を訪れた事により、ポーター女史の描いた世界感や強く願った
自然への思いを、より身近に感じられるようになったからだと思います。

 読んだ伝記のあとがきに、日本の絵本作家「いわむら かずお」氏のコメントがあり
とても興味深く感じました。いわむら氏は「14ひきシリーズ」という
繊細に描かれた四季折々の情景の中で14ひきのねずみが生き生きと
活動する絵本作品の作者です。この絵本シリーズ、日本中はもとより
現在では、海外でも人気の絵本なのです。
 彼はポーターの伝記のあとがきで、彼女がピーターラビットや色々なシリーズの絵本を
実物の動物をよく観察し繊細な筆で丁寧に描いた事や、自然に暮らし、自然を愛した事に
深く影響され、自分もまた、自然に暮らし、自然を観察して14ひきシリーズを描いていると
書いていたのです。